さて,卒業生の皆さん,ご卒業おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。今,全員に卒業証書を授与いたしました。この卒業証書には皆さんが仲間や先生方と過ごした近校での三年間が凝縮されています。卒業証書を手にすることで,近校で過ごした高校三年間の重みを感じ,この三年間で着実に成長した自分を実感して欲しいと思います。
卒業に当たり二つのことをお話しして餞の言葉にしたいと思います。
一つ目は「環境の変化に対応できる力を身に付けて欲しい」ということです。
今,我々を取り巻く環境は想像を超える速いスピードで刻々と変化をしています。また,あらゆる情報や資源が国境を越えて行きかう時代になっています。私も含め皆さんには予測困難な将来が待ち受けていると言っても過言ではありません。AIの発達により学び方や働き方,生き方が大きく変わろうとしています。次のステージに向かおうとしている皆さんには,これからの変化の激しい時代を生き抜いていくために,いち早く環境の変化や状況を読み取り,理解し素早く対応できる力を身に付けて欲しいと思います。そのためには,広い視野を持ち高い専門性を身に付けることはもちろんですが,知的好奇心をもって主体的に学び続ける態度を持つこと,多様性を受け入れ様々な人と協働すること,これまでにない新たな価値を生み出すことなど,将来に向けた力を身に付け蓄えることが大切だと考えています。
私は皆さんにはそれができることを確信しています。それは私が皆さんと高校での三年間を共に過ごし,様々なことにチャレンジする姿や頑張る姿,困難な場面を乗り越える姿を見せてくれ,着実に成長をして今この場にいるからです。また,適切な例ではないかもしれませんが,二年生の時の修学旅行で豪雪のため急遽ホテルを変更したり日程変更をした時,その状況を理解しての冷静な対応ができました。また,昨年七月の豪雨災害の時には,鉄道が不通になり登下校の混乱や始業時間の繰り下げなど大変な状況の中で最上級らしく冷静できちんとした対応をしてくれました。この三年間,皆さんは様々な体験や経験をしてきましたが,これらを貴重な財産として,本校卒業生としての自信と誇りをもち続け,これからの世代を担う人材として,グローバルな社会で活躍してくれることを期待しています。
二つ目は,「感謝できる心を持ち続けて欲しい」ということです。皆さんの今があるのは,これまでに保護者の方々,家族,先生方,多くの仲間の支えがあってのことです。また,人だけでなく,様々な物や目に見えない環境や制度,ルールのおかげです。皆さんは今それに気づいているでしょうか。人は一人では生きていくことはできません。先にも述べたように,これからの学び方や働き方,生き方は大きく変わろうとしています。皆さんはこれまで以上に多くの人たちと関わっていくことになります。私は人と関わるときに大切なのは「挨拶」と「感謝の心」だと考えています。挨拶は入口,感謝の心は出口であると同時に次への入口だと考えています。挨拶は声に出して言うのですぐに伝わりますが,感謝の心はなかなか相手に伝わりにくいものです。感謝するに値するものに気づかないことがあるのかもしれません。皆さんには,これから多くの人間関係を築いていく中で,感謝するに値するものに気づき,感謝できる心を持つとともに,それらを言葉や態度で表せる人であり続けて欲しいと思います。そのことが,校訓である「人に 愛される人 信頼される人 尊敬される人」につながり,さらにはこれからの円滑な人間関係の形成につながるのではないでしょうか。
終わりになりますが,保護者の皆様に一言お祝いとお礼を述べさせていただきます。改めましてお子様のご卒業,おめでとうございます。今日の日を迎えられお喜びもひとしおのこととお察し申し上げます。保護者の方々にはこの三年間,陰になり日向になりお子様を支えてこられたことに敬意を表するとともに,物心両面から本校の教育推進にお力添えを賜りましたことに厚くお礼を申し上げます。これからは勝手ではございますが,同窓生の保護者というお立場で,引き続き本校の発展を温かく見守って頂ければ幸いと考えていますので,よろしくお願い申し上げます。本日は,誠におめでとうございます。
さて,卒業生の皆さん,今日は新しいステージへの旅立ちの日です。全員で皆さんの門出を祝福し,喜びたいと思います。近畿大学学園(本校)の学園章は梅の花びらをモチーフにしていますが,左上の一部がやや離れているのは,未来志向に基づく内面の未完さらに充溢(じゅういつ),完熟をめざし向かう姿を象徴しています。第二一回卒業生の皆さんには,この学園章に象徴されるように,梅の花のような高い品格をもち,未来に向かって自信と誇りを持って充溢(じゅういつ),完熟をめざし続けてくれることを期待しています。校歌にある「めざすもの 学びのこころ」「めざすもの 技の競い」「めざすもの 平和のこころ」を贈る言葉とし,また,第二一回卒業生二〇六名の皆さんの将来に幸多きことを祈念して,式辞と致します。
平成三一年二月二八日
近畿大学附属広島高等学校東広島校
校長 前 眞一郎