「梅花霜雪を経て開く」。自然の厳しさを経て春いちばん,品格高き梅の花が咲き開きます。梅の花は近畿大学の学園花であり,学園章にもデザインされています。今年も冬の寒さに耐え,梅の蕾もふくらみはじめ,ここうめの辺にも春の息吹が感じられる頃となりました。今日のこの良き日に,近畿大学工学部長補佐 旗手稔様,衆議院議員 中川俊直様をはじめ多数のご来賓の方々,保護者の皆様のご臨席を賜り,第一七回近畿大学附属広島高等学校東広島校卒業証書授与式を,かくも厳粛にまた盛大に挙行できますことに感謝申し上げるとともに,本校職員を代表して厚くお礼申し上げます。
さて,二二九名の卒業生の皆さん,卒業おめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。今,全員に卒業証書を授与いたしました。この卒業証書には校訓である「人に 愛される人 信頼される人 尊敬される人 になろう」のもとで,皆さんが仲間や先生方と過ごした高校での三年間が凝縮されています。ワンランク上をめざせた三年間だったでしょうか,輝くことのできた三年間だったでしょうか。卒業証書を手に改めてこの三年間を振り返り,心身ともに立派に成長した自分自身の姿に自信と誇りを持って欲しいと思います。
卒業に当たり二つのことをお話しして餞の言葉にしたいと思います。
皆さんはまさに今,この近校を巣立とうとしています。今の世の中は価値観が多様化し,混沌とした状況の中で,将来の予測が困難であると言っても過言ではありません。また,グローバル化や情報化の進展も想像以上に速いスピードで進み,あらゆる資源が国境を越えて行きかう時代になっています。刻々と変化し,複雑化,高度化をしていく課題が次々と出てくる中で,これからは学校で学んだ知識や技能を定型的に適用して解ける問題は少なく,答えのない問題から最善の解を想像する力が必要になってくることでしょう。このような状況の中で将来社会に出る皆さんには,変化の激しい時代を生き抜くことのできる資質や能力,高い専門性を身に付け,生涯学び続ける姿勢をもって欲しいと思います。私は皆さんにはそれが全員できることを確信しています。高校の三年間を振り返ってみてください。学習はもちろん,行事や部活動など様々な場面で頑張っている姿を見せてくれました。また,幅広い人間関係も築いてきました。おそらく,全てが順調で思い通りに進んだのではなく,困難な場面に遭遇したことも数多くあったことでしょう。しかし,皆さんはそれらを乗り越え,着実に成長をして今この場にいます。皆さんには近校での貴重な経験や,身につけたことを忘れず,近畿大学の建学の精神である「未来志向の実学教育」と「人格の陶冶」を基盤として,広島県を内外から支え,日本の将来を担う人材に大きく成長してくれることを期待しています。
二つ目は,「感謝できる心を持ち続けて欲しい」ということです。皆さんの今があるのは,これまでに保護者の方々,家族,先生方,また,多くの仲間の支えがあってのことです。また,色々な物や目に見えない環境や制度,ルールのおかげです。『感謝するに値するものがないのではない。感謝するに値するものに気づかないでいるのだ。』これは思想家であり実業家でもあった中村天風の言葉です。平素何気なく生活をしていると,あたかも自分一人の力で物事が進んでいると錯覚しがちですが,改めて色々な場面をふり返ってみてください。おそらく,そのような場面が多々あったことに気づくはずです。これからも「感謝するに値するもの」に気づき,「感謝できる心」を持つとともに,それらを言葉や行動で表せる人間であり続けて欲しいと思います。
終わりになりますが,保護者の皆様に一言お祝いとお礼を述べさせていただきます。改めましてお子様のご卒業おめでとうございます。今日の日を迎えられ,お喜びもひとしおのこととお察し申し上げます。保護者の方々にはこの三年間,陰になり日向になりお子様を支えてこられたことに敬意を表するとともに,物心両面から本校の教育推進にお力添えを賜りましたことに厚くお礼を申し上げます。これからは,同窓生の保護者というお立場で,引き続き本校の発展を見守って頂きますよう,よろしくお願い申し上げます。
さて,卒業生の皆さん,今日は,新しいステージへの旅立ちの日です。全員で皆さんの門出を祝福し,喜びたいと思います。皆さんには無限の可能性が秘められています。それぞれの新しい環境の中で,近畿大学附属広島高等学校東広島校第一七回卒業生として,自信と誇りを持って力強く前に向かって進んでください。校歌にある「めざすもの 学びのこころ」「めざすもの 技の競い」「めざすもの 平和のこころ」を贈る言葉とし,また,将来に幸多きことを祈念して,式辞と致します。
平成二七年二月二八日
近畿大学附属広島高等学校東広島校
校長 前 眞一郎