2020年3月18日水曜日

「贈ることば」~近畿大学附属広島高等学校東広島校 令和元年度 卒業証書授与に際して~

「贈ることば」 
~近畿大学附属広島高等学校東広島校 令和元年度 卒業証書授与に際して~

第22期卒業生のみなさん、ご卒業、おめでとうございます。
今年度の卒業証書授与式は、新型コロナウイルス感染対策ということから、このような形でしか実施出来なかったことを、とても残念に思います。しかしこれから私は皆さんの門出を祝い、心を込めてお祝いの言葉を贈ります。

今年は暖冬のせいか、近畿大学の校花である梅の花も例年より早く開花が始まり、その可憐で品格のある白や赤、うす紅色など様々な色の梅花が個性豊かに咲き誇っています。春に一斉に咲く桜の花はゴージャスで美しい。しかし梅の花は1月のまだ寒い時期から少しずつ咲き始め、3月に様々な色合いで自己主張しながら満開を迎えます。私はそんな梅の花を見て、今日のみなさんの姿を思い起こしました。みなさんにとってこの半年は進路のこと、受験勉強などで様々、苦しかったことや辛い思い出が蘇ってくるかもしれません。しかしみなさん一人ひとりが頑張った成果を胸に、こうして卒業の日を迎えられることは、本当に幸せなことです。進路についてはまだ結果が出ていない人も、きっと自分にとって最善の道が待っていると思います。

さて、今、みなさんには一人ひとり卒業証書を授与いたしました。この卒業証書には皆さんが友だちや先生方、そして保護者の皆様と過ごした近校での3年間が凝縮されています。この卒業証書を手にすることで、本校で過ごした高校生活を思い出し、たくましく成長した自分自身を実感してください。

ここでみなさんが卒業するに当たり、私は二つのことばを贈りたいと思います。ひとつ目は冒頭でもお話しした梅の花にまつわる歌です。平安時代に菅原道真(すがわらのみちざね)が、平安京から太宰府に左遷されて家を出るときに詠んだという有名な歌です。これは太宰府天満宮の「飛梅」伝説の由来にもなっています。

東風(こち)吹かば にほひをこせよ 梅花(うめのはな) 主なしとて 春を忘るな
(東風ふかば にほひをこせよ 梅の花 あるじなしとて 春なわすれそ)
「(春になって)東の風が吹いたならば、その香りを(私のもとまで)送っておくれ、梅の花よ。主人がいないからといって、(咲く)春を忘れてくれるなよ。」という意味ですね。

道真公の梅の花への想いがよく感じられる歌ですが、冤罪で左遷されることに対する悔しさ、子供と別れ別れになる寂しさなどもにじみ出ているように思います。遠くへ行くものに対する思いやり、そして努力を怠らず、希望を持ち続けてほしいという励ましとも受け取れませんか。みなさんは一人ひとりが異なった考えや素晴らしい個性を持っています。この歌の解釈も、ぜひみなさんが自分の状況に合わせて考えてみてください。きっと心に爽やかな風が吹いてくると思います。

もうひとつのことばは、フランスのノーベル賞作家アンドレ・ジッド(Andre Gide)の名言を、少しもじったものです。
You cannot discover new oceans unless you have the courage to lose sight of the shore.
「陸地を見失う勇気を持たずして、新しい大海を発見することなど出来ぬ。」

これについては、特に付け加えて言うことはありません。ぜひこれからも失敗を恐れず、何事に対しても勇気をもってチャレンジしてください。(このことばは生徒会の機関誌「忘れな草」にも載せているので、後ほど見てください。)

終わりになりますが、本日は残念ながらご臨席いただけなかった多くの保護者の皆様に、お祝いとお礼を申し上げます。この三年間、本校の教育にお力添えを賜りましたことを、本当に感謝しております。これからは勝手ではございますが、同窓生の保護者、PTAのOBというお立場で、引き続き本校の発展を温かく見守って頂ければ幸いです。卒業生の皆さんは、そんな私の気持ちをこれまでお世話になったお父さん、お母さんへぜひ伝えていただければ、と思います。

さあ、卒業生のみなさん、今日は新しいステージへの旅立ちの日です。全員で皆さんを祝福し、喜びたいと思います。近畿大学の学園章は先ほどの梅の花びらをモチーフにしていますが、左上の一部がやや離れているのは、未来志向に基づく内面の未完を表し、完成をめざす姿を象徴しています。この学園章に象徴されるように、梅の花のような高い品格と個性、未来に向かって自信と誇りを持ち、努力を続けてくれることを期待しています。みなさんの将来に幸多きことを祈念して、送ることばと致します。

I would love to congratulate on your precious graduation!

令和2年2月29日
近畿大学附属広島高等学校東広島校
校長  橋本 晃一